京人形の歴史
ドレスやメイクアップ、豊富な遊びのバリエーションを取り揃えた着せ替え人形の進化に驚かされる時代になりました。しかし、時代をさかのぼること平安時代(794年~1185年)そこには、現代よりも緻密かつリアルな人形が存在していました。
そして現代にもその人形を作り続ける職人の方々がおり1,000年もの長い年月の間、色褪せることなく伝統を継承しています。
その人形は京都を中心に作られていたことで「京人形」と呼ばれており、京都伝統工芸品の集大成とも言える工芸品です。その最大の特徴として分業制作であることが挙げられます。仏壇、染織物、漆と様々な工芸品がある環境下だからこそなせる業であり、頭、髪付、手足、着付け、小道具など、各工程のプロが織りなす手技は見る者を魅了します。
1000年前から色褪せない行事
今より1000年以上前、そもそも人形は土偶や埴輪など、人の身代わりとして埋葬をすることや、厄除けといった用途で使われておりました。そんな人形も変化を遂げ、平安時代には貴族階級の女児が参内で行われることの真似事をして楽しむ用途に移り変わっていきました。
江戸時代には、すべての物事が江戸中心へ変遷するものの、こと人形制作においては京都を中心に発展をしたことで、京都には人形職人が多く存在しました。当時より、3月3日は桃が咲く季節ということもあり「桃の節句」と呼ばれ、貴族階級の女児が、人形、御殿、飾りつけで遊ぶことで厄除けを願うという行事が行われていました。
その行事は現代も「雛祭り」として、子供の誕生や成長を祝う日として愛されております。女児だけではなく、飾兜、武者人形が男児用にと、新たな節句人形が京都で生まれ京人形の文化が広まっていきました。
現在の京人形
現代では、核家族化が進展し、3世代家族と呼ばれる大家族が減少してきています。そのため、祖父、祖母と過ごす機会が減少することと比例し、若者が伝統文化に触れる機会も減ってきています。そんな中、京人形を製作する職人の方々も老若男女問わず、様々な世代に工芸品の素晴らしさを広めるべく様々な施策を打ち出しています。
例えば、現代住宅の需要に合わせ、インテリアにも馴染みやすいようなコンパクト且つ、色味の少ない節句人形も登場しています。また、コロナ禍で売上が減少している中、SNSの活動を積極的にすることで、若者をターゲットに長期的目線で考えておられる方々もいらっしゃいます。
古来に生まれた技術が現代を残し、様々な世代に寄り添う京人形はこれからの時代にも新たな形で皆様の目に留まることでしょう。
1,000年も前から存在する京人形の歴史を今も見て、触って感じることができるのはその技術を継承してきた職人の方々がいるからこそ。そんな職人の方々の魂の結晶を是非ご覧ください。