【奈良墨とは】 日本をブラックな香りで楽しむ

奈良墨の製作工程

彩煙

菜種油、胡麻油を土器に入れ、灯芯を差します。
火を灯し、土器の蓋についている煤を取ります。

膠(にかわ)の溶解・原料の撹拌

膠を一定の温度で均等に溶かすため、窯に水と膠を入れ4時間程かき混ぜます。
その後、煤、香料を加え撹拌し、練り合わせます。
※膠とは、動物の皮膚や骨などの主成分・コラーゲンに熱を加え抽出したもの。
ゼラチンと呼ばれる。

木型・型入れ

生墨を規定の大きさに計量し、木型に入れます。空気が入らないようじっくりと練ることが重要です。

灰乾燥・自然乾燥

最大で6か月を超える乾燥を行います。水分を多く含む生墨を新聞紙で挟み乾燥したのち木灰に埋めていきます。その後自然乾燥をさせ、パリッと仕上げていきます。

磨き

乾燥の後、表面に付着する灰や不純物を取り除き、
木炭の火で炙り、ハマグリの貝殻で磨き上げていきます。

彩色

金粉、銀粉を用いて文字や図柄、絵柄を1丁づつデザインしていきます。

奈良墨の特徴

日本人にとっては、非常に馴染みのある「墨」。小学生の時には書道の授業があり、頻繁に白いTシャツを汚し親に怒られたものです。奈良で作られる墨は「奈良墨」と呼ばれ、固形墨においては国内で95%のシェア率を誇り、職人により1000年を超える技術を今に至るまで継承しています。

制作工程において機械を用いて自動化できる部分は極めて少なく、現在もほとんどの工程を職人による手仕事で行われています。奈良墨最大の特徴は粒子が均一且つ、不純物が含まれていないことにあります。そのため、硯と炭が触れ合う心地は滑らかで、色味に変化がなく、艶と深みを伴う書道家にはこれ以上ない一品です。

また、実用性だけではなく、芸術性も兼ね備えるのが奈良墨。墨型を用いて、墨に文字や龍、植物などのデザインが施されており、「使う」「見る」と2つの楽しみ方を持ち合わせます。

奈良墨の歴史

墨が日本に伝達したのは、約1400年も前のこと。日本書紀の記述から610年に中国からやってきたと記されています。当時は、奈良に都がおかれていたことから、写経や、文書作成の筆記道具であった墨の需要が非常に高かったそうです。尚且つ奈良の立地が墨づくりに適していたことが現在まで墨づくりが盛んになっている大きな要因となっています。

奈良墨の需要が高まる一方で、奈良という好立地(盆地・冬季の冷え込み)を皆が求め、職人は奈良に集まり、各地方での墨の生産は衰退していきました。1400年経過した今でも、制作工程、職人の手仕事は変わらず、高品質の墨づくりが継承され続けています。

現在の奈良墨

2つの楽しみ方があると申し上げた奈良墨ですが、奈良墨に兼ね備わるもう一つの特徴「香る」という楽しみ方がトレンドになっています。香り墨はほのかに香る墨の匂いを楽しむだけでなく、コロンッとした可愛らしい見た目も特徴的です。100年以上、代々奈良墨を作り続けている錦光園では、伎楽(古来より伝わる音楽劇)に用いられる面をモチーフとした3種類の形をした香り墨が制作されております。

迦楼羅:厄除け
呉女 :身体健全
力士 :美しさ

それぞれに個性的な形、エピソードがあり、縁起物や贈り物として活用されています。香り墨の型は、奈良を代表する古楽面作りの第一人者である中坊竜堂氏。奈良墨作りは錦光園と奈良の職人による技術が詰まった最高傑作品です。

香り墨

書道をするためだけの墨ではなく、「使って」「見て」「香って」3通りの楽しみ方ができる奈良墨。水玄京オンラインショップに商品がございますので、是非ご覧ください!

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