創業者の想い

取締役 柴田 実

「先人にどう感謝を伝えるか」

私は、高校3年間をイギリス、大学での1年間をオーストラリアで過ごしました。長期休み等で日本に帰国するタイミングで、日本人が評価される所以でもある「文化」に今まで以上に興味を持ち、実際に触れてみようと多くの場所に足を運びました。その中でも、留学後に訪れた福井県に所在する永平寺での修行は、私にとって人生の分岐点となりました。留学時代に感じた気持ちの整理、今後の展望を描こうと行ったものの、座禅をしている最中にずっと考えていたことは、修行にいく1週間前に亡くなった祖父のことでした。いつでも自分のすべての行いを寛大な心で許し、包み込んでくれた祖父は何を考え人生を生きてきたのか、生きているうちに話しておけばよかったと後悔の念と同時に、これからの人生をどう歩むかを考えていました。そんなことを考えていた修行中に、僧侶の方に以下のような説法を説かれました。

「先人たちに感謝をし、生きなさい。目の前にいる人と会うのは最後だと思い過ごしなさい。」

できているか、できていないかすらもわからない自分に腹が立ちました。これまで自分がしてきたことは「感謝しているつもり」だったと感じました。今は亡き先人にどう感謝を伝えればいいのか考えた時に、その人たちの想いを後世に伝え、その想いの糸を紡ぎ、途切れさせないことだという自分なりの答えを見つけました。その際に、「先人にどう感謝を伝えるか」というテーマを人生に掲げ、生きていこうと決意しました。

 帰宅後、現代社会において、先人の意思を継ぎ、感謝を後世にも伝えられる領域はどこかと考えた時に、きめ細やかな技術を持ち、日本の産業に貢献をしてきた「職人」が頭に浮かびました。工芸品市場を調査してみると、産業が斜陽しているのは一目瞭然で、この世界の発展を推進させているデジタル化市場の需要に応えるための大量生産が原因の一つであることが分かりました。効率化を求められる世の中に、デジタル化と相対して存在する職人の手仕事。この手仕事が時代の移ろいと共に次世代に継承されずに消失していくことは非常にもったいないことだと思い、何か自分で行動が起こせないかと考え始めました。大学卒業後は社会のことを理解するため、新卒で一般企業に就業し、工芸品産業に何ができるかの準備を水面下で進め株式会社水玄京を創設しました。

水玄京を創設し、職人の方々へは商品販売方法、商品PRのご提案、消費者の方々へは、SNS、オンラインサイトを通じて今以上に工芸品の魅力を知っていただきたいと思っています。きっと素敵な工芸品との出会いがあると思います。

工芸品を、職人を、国内外問わず多くの人に知ってもらい、包括する諸問題を解決することで、工芸品市場の斜陽化、ないしは、日本が抱える社会問題の解決に大きく貢献できると信じております。日本の文化を世界に発信し、より色濃く後世に受け継がれる産業にできるよう邁進してまいります。何卒よろしくお願い致します。

経歴

15歳で単身イギリスに留学。高等学校を卒業後、立命館大学経営学部国際経営学科に入学。在学中の2018年~2019年の1年間、西オーストラリア大学へ交換留学。2020年大学を卒業後、株式会社マイナビ 人材紹介事業本部へ入社。同社退社後、2022年3月に株式会社水玄京を創業。