【真田紐職人】和田 伊三男さんにインタビュー

機(ハタ)などを使い縦糸と横糸で平たい紐状に織っていくものを「真田紐」と言います。最狭6mm程度の世界で一番狭い織物と言われていて、元々は甲冑や刀、茶道具、荷物を運ぶ時などに使われていた紐です。真田紐師江南ではその真田紐を使って、ブレスレットやインテリアなど様々なものを作っています。
戦国時代から500年以上真田紐を作っている、真田紐師江南の15代目 和田 伊三男さんにお話しを伺いました。

—生い立ちを教えてください。

生まれも育ちも京都で、中学からは奈良の学校に通っていました。高校からアメリカに行き、ペンシルベニア州にあるクリスチャンの全寮制の男子校に3年間行きました。そこは普通の高校とは違って、生徒のやりたいことを手助けするような高校でした。例えばスポーツが好きな生徒には先生がスポーツ選手になれるように色んな所にアプローチして道筋を作ってあげるような学校です。
僕の場合は、美術が得意で、作った作品をコンクールなどに出して、いろんな賞をもらいました。一度、Scholastic Art Awardsでブルーリボンを頂き、全米一になる事もできました(笑)
功績が認められ、ホワイトハウスで展示会をしたりもしていました。卒業年度になるとボストン美術館付属の美術学校に自ら話をしに行き、面接を受けると、実績が認められ、入れてもらうことになりました。卒業後は、日本に帰ってきて父と母のこの仕事を継ぎました。

—何かスポーツはされていましたか?

あんまりやってないんですけど、中学生のころに剣道をしていました。もともと真田紐は甲冑の紐や刀の下げ緒などに使われていたので、武道を学ばないと実際の真田紐の使い方を伝えることが出来ないと思っていて、剣道をしていました。元々、運動音痴なのでスポーツはあまりやっていないですね(笑)

—尊敬する方はおられますか?

真田幸村のお父さんの真田昌幸という方です。もともと真田紐は荷物を縛る紐として日本に持って来られた物なんですけど、真田昌幸は甲冑に使ったりなど、真田紐を効果的に使えるように考えた人で、頭の柔らかさが尊敬できる点ですね。
あとは、千利休さんですね。真田紐を桐箱に使うというのを考えたのが千利休さんなんです。
それまでは、塗箱にくみひもを使っていて、貴族や位の高い人しかお茶を出来なかったのですが、それを一般の庶民に広めたのが千利休さんです。真田紐には約束事やルールのようなものがあり、それを最大限生かせる使い方を考えた方で尊敬しています。千利休さんは僕のご先祖様でもありますしね(笑)

—今の仕事内容を教えてください。

基本的に真田紐に関することは全部しています。真田紐を作る、真田紐のアドバイスをする、最近では講演会、修学旅行の体験教室で若い子たちに真田紐を伝えるという事もしています。講演会でも茶道の重鎮の方々が集まる年次総会で講演をしたり、国立博物館などに携わっている方々など、あらゆるジャンルの方々に講演をさせていただいてます。今は真田紐は廃れていて誰も知らないので真田紐のことを伝えるために、講演会などのオファーを受けるようになりました。

江南店内
—仕事で誰にも負けないところはありますか?

おそらくここが真田紐のお店として一番古いお店で、真田紐専門店というのはもうここだけです。京都ということでお茶文化もあり、真田紐のいろんなルールや約束事はある程度分かっているので、それをアドバイスできるというのが一つの強みですね。

やりがいを感じる瞬間は?

真田紐で試作品を作っているときに思いがけないものが出来た時は面白いですね。他にもお客さんからのフィードバックとして、本来の使い方とは違う使い方をしているお客さんの話を聞くとそういう使い方もあるんだと新しい発見をできるのも面白く、お客さんとコミュニケーションを取っているときが一番やりがいを感じますね。

—これからの展望は?

僕自身がやりたいというより、真田紐っていう物の可能性はかなりあると思っています。真田紐の構造の話なんですけど、本を読んでいた時に宇宙エレベーターという物を目にしました。宇宙までエレベーターをつなぐという物なんですけど、これのレールになるのがカーボンナノチューブというものが編み込まれて作られており、その構造が真田紐と全く同じだったんですよ。まだ宇宙エレベーターの実現は出来ていないんですけど、真田紐を突き詰めていくと色んなものに使えるので、真田紐の可能性を広げたいと思っています。

—職人を目指す方へのメッセージをお願いします。

職人は家に籠って仕事をするというイメージがあると思うんですけど、人と接する事の重要性を理解しておくべきだと思います。人と接することで、刺激を受けたりアイデアが浮かんだりすると思っていて、人と接さずに家に籠って何かを作っていると自分よがりのものが出来てしまう。相手のためを思って物を作るのが職人でコミュニケーションを図るというのは非常に重要だと思います。
家の中で一人で仕事ができるからという理由で、職人を目指す若い方が最近多いんですけど、人とコミュニケーションを取れる人でないと職人はなかなか務まらない。これから職人を目指す方には人とのコミュニケーションを大事にして、他の人から刺激やアイデアを得ていいものを作っていってほしいですね。

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