「世界一の黒への挑戦」を掲げる株式会社京都紋付。受け継がれてきた伝統技法と現代の風潮を掛け合わせた事業を行う、「黒」に人生を懸ける企業である。漆黒の暖簾をくぐり、受付で挨拶を済ませると応接室へ案内をされた。すると、代表の荒川徹さんが小走りで応接室へいらっしゃった。パソコンを片手に、「今も取材を1件受けてきたところです。さぁなんでも聞いて下さい!」とかなり取材には慣れているご様子。そんなメディアに引っ張りだこの荒川さんに、お仕事への想いをはじめとする様々なお話を伺った。
- ——幼少期の頃からの生い立ちを教えてください
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親からはやんちゃな子供だったと聞かされています。学生時代はあまりまじめに勉強をしておらず、クラブ活動のサッカーに熱中していました。今でもシニアサッカーをするくらいサッカーが好きです!高校生からは、そんなクラブ活動の傍らで、株式会社京都紋付でアルバイトとして働いていました。
大学卒業後は、自分がこの会社を継ぐという意識を持ちながら、他社にて営業職として3年程働きました。すぐに家業を継がなかった理由としては、他の仕事を通して家業ではできない経験ができると思ったためです。アルバイトをしていたので、家業のことはある程度理解していましたしね。他社で働いている時も、やめた時も必然的に会社を継ぐという意識はあったのにもかかわらず、工芸品業界が斜陽化していることもあり、将来に対する不安が消えないまま入社をしました。
- —やはり100年以上続く企業とはいえ、伝統工芸品業界という大きなくくりで見ると将来に不安があったのですね。代表になられて長いと思いますが、ここで改めて株式会社京都紋付の強みはどのようなところにありますか。
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黒に強いこだわりを持って極めていこうと思っていることです。「黒」を極めるために様々な新たな技術を導入しています。企業秘密で工程を見せることはできませんがね(笑)
こういう技術や、伝統を守って、時代に合わせて進化させていくことが、自分たちにしかできないことだと思っています。先祖代々続く企業の継承者として思うことがあります。会社経営は3代目で潰れるとよく言うけれど、それは時代の変化に対応できていないからだと思います。1代目、2代目がしてきたことに需要があると思い込んで、慢心し、新たな挑戦を起こさないことが多い。しかし、需要と供給にずれが起きていることに気づかず、又は対応できずに沈んでいくと思うんですよね。経営者として主軸はブラさず守るべきところは守り、新たな需要の波に乗らなければいけないと思っています。
世界に残っている伝統文化を見てみると、日本には圧倒的に多くの伝統文化が残っていると思います。これをいかに継承するかは自分たちの責任でもあるし、若い人たちの責任でもあると考えています。
- —代表としてかなりお忙しくされていると思うのですが、ストレスはどのように解消していますか?
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ストレスはほとんどないですね。仕事は楽しいです。というのも、今後の将来のことを考えていると、自然としなければいけないタスクが出てきますし、それを一つ一つこなして、努力をする過程で生まれるストレスは楽しいと感じています。それでもやっぱり、ストレスが溜まってしまうときは仲間に頼ります。趣味でよくサッカーをするのですが、一緒に体を動かしたり、話したり、愉快なことをしていると自然とストレスは無くなりますね。
- —荒川さんにとって尊敬する人物はどなたですか?
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尊敬する人物は父親です。仕事に対して一生懸命で、アイディアも豊富でした。なにより行動力があるところを尊敬しています。様々なことに挑戦をして、諦めるということを知りませんでした。形として作り上げるまでやり遂げていたところを非常に尊敬しています。
- —そんなお父様から伝えられたお言葉や、荒川さんにとって大事にしている言葉はございますか?
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「原点回帰」と「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」です。原点回帰は、仕事は常に原点を忘れてはいけないという思いから。臥薪嘗胆は、浮き沈みがたくさんある中で、感謝となにくそという気持ちを忘れたらいけないという思うからです。仕事をする中での2つの最重要事項ですね。
- —京都紋付といえばやはり黒の印象が強いのですが、黒にはどのようなイメージを持っていますか?
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凛々しい。男らしい。力強い。ですかね。 日本語だと黒以外にも、漆黒や墨色など黒を表す多くの色があります。日本人の瞳が黒いことも影響していると思っています。
日本人にとって黒は身近で1色で様々な表現ができる色なのではないかと。この仕事は日本人だからこそできると自負していますし、黒ではなく、「真っ黒」にしていくことが僕たちの仕事だと思っています。
- —荒川さんはどのような方と一緒に仕事をしたいと思っていらっしゃいますか?
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明るく元気で素直な人ですね。こういう人がいたら自然と良い環境が生まれると思います。あくまでもお金を儲けるのは手段であって、世のため人にためにする事が目的なので、そこのベクトルに合う人を採用したいです。そういう人が入社してきたら、社員を越えて家族みたいになってきます。こういう体育会系みたいな雰囲気が嫌いな人もいますが、やっぱり「明るい」「元気」「素直」が一番です!
- —最後に今後の展望について教えてください。
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Rewear Projectという、着なくなった服、汚れた服を自社の黒染めの技術を生かして染め直すというプロジェクトを始動しています。国外へのサービスは只今準備中ではありますが、今後は世界に向けて、廃棄された衣類を黒色に染めることが出来るという事実を知ってもらいたいです。それと同時に紋付の文化を残していきたいと思っています。
これは展望ではなく、宿命ととらえていますけどね。。
YouTubeで京都紋付の作業風景をご覧いただけます!