【京つづら職人】渡邉良和さんにインタビュー

25もの工程がある京葛籠。その25工程のすべての工程を自分で行う日本でただ一人の葛籠師、渡邉良和さん。工房は、清水寺のふもとに位置し、観光客の人通りも多いエリアだ。工房に伺うと、親子2人で相撲中継をテレビで見ていた。力士の葛籠を作る職人が相撲を見ている姿をみて、親子そろって相撲ファンなんだなぁと、なんだか心が温まった。我々に気づいた2人と挨拶を済ませ、インタビューをさせていただいた。

—幼少のころからの経歴を教えてください。

小さい時は山の中走り回ったり、遊んだり、野球をしたり、活発な少年でした。18歳で高校卒業後、家業に入りました。時代的に長男が家業を継ぐのが当たり前の時代という事と、同業者が少なくなっていたという理由から継ぎました。父の代では東京を含めて3〜4件しか同業者がいなかったので、継ぐことはある意味必然的でしたね。現在58歳で40年間この仕事に従事しています。

—継ぐことが「必然的」とおっしゃられましたが、他にやりたい仕事はありましたか?

周りに職人さんや家業をやっている息子が多かったため、家業を継ぐことに否定的な気持ちはなかったです。

―渡辺商店のこだわりを教えてください。

綺麗で丈夫なものを作ることです。購入者に合ったものしか作らないというスタンスをとっているため、今は受注生産しか行っていません。注文されたお客様だけの、オンリーワンのものを作りたいです。

―尊敬している方はいらっしゃいますか?

やはり、父親ですかね。父親が亡くなってから8年が経ちましたが、今になってすごい職人だったと気づかされました。商売として一緒にやっている時は気づきませんでしたが、よくここまで京葛籠を残してくれたなと感じています。京都だけでなく日本で残っているのは渡辺商店のみです。特に、自分が残していかないといけないとか、なんとかしていかなきゃいけないとかそういうことは考えていません。ただ、「欲しい」と思ってくれている方が1人でもいたら、その人のために仕事を続けていきたいと思っています。

—大切にしている言葉や好きな言葉はありますか?

祖父に言われた、「働かざる者食うべからず。」という言葉です。とりあえず働きなさいということですね。コロナで仕事がないとか関係なく、自分自身の働くルーティンを守ることを意識しています。朝は何時に起きて、夜は何時に寝る。これを崩さないように徹底していて、それが自分自身の次に繋がると考えています。

―趣味はありますか?

趣味は、バイクに乗ることです。一人で現実を忘れるためにいろんなところに行くのが好きです。最近では神戸空港に行ってきました。昔からバイクとは近い距離にいたから、バイクが趣味です。

—弟子ができたときに初めに教えることは何ですか?

初めの基礎は教えるけど、あとは見て覚えさせるようにしています。竹は一本一本全く違うものなのでそうしたほうがいいと思っています。刃物を持つので怪我をする可能性があるから、そこは気をつけていますね。だけど、基本的に見て覚えて欲しい。自分自身がそう育ったので。

―葛籠を買う消費者にどのような形で使ってほしいですか?

葛籠は日本の風土にあった収納道具です。海外だと湿度、気温が違うので、元々の用途と違えど、思い思いに使って欲しいです。大切なものを収納するでもいいし、子供の代や孫の代にどんどん受け渡してほしい。使い捨てじゃないので長く使ってほしいと思います。

―最後に、職人を目指す若者達へのメッセージをいただいてもいいですか。

僕たちのいる分野(京葛籠)は学校で習わないことが多いので、難しいと思うし、サラリーマンではないので、ある程度の覚悟は必要だと思います。師匠と若い職人のお互いが理解し合っていかないと、伝統は残していけないですよね。職人として働くと、ある程度時間を管理することは出来る事は良いことだと思います。努力次第で精神的には楽になるし、お金にもなるから楽しいですよ。

YouTubeで京葛籠の製作工程をご覧いただけます!

https://www.youtube.com/watch?v=4Ug3wmPyaKs
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!