【近江一閑張職人】蛯谷亮太さんにインタビュー

滋賀県湖南市に工房を構える蛯谷工芸。近江一閑張とは初代蛯谷金介が考案した、紙紐で作られた一閑張。今回インタビューさせて頂いたのは初代の孫にあたる三代目の蛯谷亮太さん。パティシエやバイクレーサーと職人には珍しい経歴を持っておられた。バイクレース中の大事故を乗り越え、近江一閑張の職人になった、そんな蛯谷亮太さんにお話を伺った。

—ご経歴を教えてください

生まれは滋賀県で、近江一閑張の職人になる前は、母親の影響でお菓子作りが好きだったので、パティシエになりました。パティシエをやめた後はバイク屋で整備士を目指しながらバイクレーサーとして活動をしていました。

—元々バイクに興味はあったんですか?

小さいころから父がバイクに乗っているのは見ていたんですけど、そこまで興味はなかったですね。パティシエを始める少し前位に移動手段をとして、バイクに乗り始めたんですけど、そこから徐々にバイクに興味を持ち始め、パティシエをやめて、バイクレーサーになりました。 今でもたまにサーキットを走ってます(笑)

—バイクレーサーから近江一閑張の職人になったきっかけは何ですか?

バイクレース中に大きなクラッシュをして、かなりの大怪我を負いバイクの仕事を続けられない状況になりました。ちょうどそのタイミングで、父が近江一閑張の仕事を跡取りがおらず、仕事を畳もうとしていたので、小さいころから見てきたこの仕事がなくなるのはもったいないと思って、継ぐことを決心しました。

—元々この仕事を継ぐつもりはありましたか?

全くなかったですね(笑)小さいころからずっとこの仕事を見てきて、はっきり言って古臭い仕事だと思っていたので、古臭いことより、好きなことをしたいと思っていました。
親も継がなくてもいいと言ってくれていたので、パティシエをしたり、バイクの整備士を目指しながらレーサーをやっていました。

—継ぐと決心した時の両親の反応はどうでした?

あんまり覚えてないんですけど、後々、この仕事をしているときに両親の嬉しい気持ちは肌で感じられましたね(笑)

—最初は弟子入りという形で始められたんですか?

家族でやっている仕事なので、「弟子」って感じではなかったですね。一人で完全なものを作ることが出来るまでは3年くらい教えてもらったらできるようになりました。 中学生くらいに手伝いで紙紐を切ったりしていたり、小さいころからいつも見てきた作業ばかりだったので割と早く一人で作れるようになりました。

—近江一閑張はどのように生まれたんですか?

元々祖父が京都で仕事をしていて、近江一閑張を作る前は木の板に和紙を貼ったものに塗りをした人形の台を作る職人でした。木の板は平面の物ばかりだったので、祖父は何か立体の物を作りたいと思っていたところ、紙紐と出会い、和紙を張る技術を応用し、近江一閑張が生まれました。平成元年くらいには人形の台よりも近江一閑張の方が売れるようになり、それが近江一閑張の始まりです。

—この仕事でのやりがいは?

紙紐は自由度が高く、自分の作りたいものを一から作ることが出来るので、完全に自分のオリジナルの商品がお客さんの手に渡った瞬間が一番やりがいを感じます。 この形が使いやすいんじゃないか、この色がいいんじゃないかなど試行錯誤した商品が「これいいねえ」とお客さんが買ってくれた時は努力が報われた気がしてめちゃくちゃうれしいです。

—近江一閑張を作る上でのこだわりはありますか?

近江一閑張では和紙を貼る工程が一番重要な工程で、空気が入らないようにきれいに和紙を貼り込むということがうちのアイデンティティでもあるので、そこを一番こだわってやっています。

—近江一閑張をどのように使ってほしいですか?

普段使いはもちろんですけど、インテリアとしても使ってもらいたいです。 置いたり、飾ったりしていても映えるので、そういう使い方をしてもらっても面白いと思っています。木や竹でできたものは海外では日本とは気候が違って、割れたりすることがあるんですが、近江一閑張は紙紐から出来ているので気候の変動に影響を受けないため、世界中の方々に使っていただけると思っています。

—尊敬する方はいますか?

バイクレーサー時代のオーナーです。バイクレースは死と隣り合わせで、知り合いも何人か亡くっているような世界で勝負をしていました。その時にオーナーに言われた「死ぬ瞬間に笑って死ねるように生きろ、後悔を残すな、全力で生きろ」という言葉が心に残っています。 それが僕の人生の目標になっていて、レースが始まる前は身の回りの整理をしてレースに出たりしていました。

—これからのご展望を教えてください。

色んな人に一閑張を知って使ってもらいたいです。近江一閑張は軽くて丈夫ですごく長持ちします。良い物を一つ部屋に置いておくだけで、生活が豊かになるので、そういう面をみんなに体感してもらいたいですね。 今少しずつ始めているんですけど、一閑張の技法を使って和紙のコップに漆を塗ったりしたものを作っています。デザイン的にも現代にマッチするような、若い世代の人達が使ってくれるものを作っていきたいと思っています。

インタビューを終えて

蛯谷さんと話していると、本当に楽しそうに仕事をしているんだなと感じました。現状に満足せず、お客さん、近江一閑張のために新しい物を作り続けている姿勢には見習わなければならないものがありました。そんな蛯谷さんが作る近江一閑張の製作風景は下記でご覧いただけます。水玄京オンラインストアにて本商品をお買い求め可能です。是非手に取って近江一閑張の良さをお楽しみください。

YouTubeで製造工程をご覧頂けます!

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