【京表具職人】小野澤光紀さんにインタビュー

京都市上京区にある京表具小野澤工房。住宅地の中に、ひっそりと佇む工房の中に足を踏み入れると、テレビやラジオなどは一切置かれておらず、ものづくりに真摯に向き合う職人の工房がそこにはあった。とても気さくに、笑顔で取材陣を迎えてくださった小野澤さん。絵画や書の鑑賞などの表具本来の仕事だけではなく、独自で表具の技術を使ったアートパネルなどを製作している京表具職人、小野澤光紀さんに話を聞いた。

—生い立ちを教えてください。

東京の世田谷区で生まれました。小学生まで東京でそこから、神奈川県の横浜市に住んでいました。中学生から京都に来るまでの間は横浜市にいて、この仕事をするために京都に21歳の時に来ました。

—現在の仕事内容を教えてください。

表装作業全般をしていて、基本掛け軸を作ったり、屏風を作ったり、襖を貼ったりしています。お茶室の襖や、障子を貼ったりもしています。これらが表具職人としての基本的な仕事内容です。表具屋さんの仕事はお客さんからの仕事を待って技術の提供をする職種なので、何か自分からできる事はないかと思い、表具の「貼る」技術を使ったアートパネルをここ1,2年で作り始めました。

—仕事でのこだわりはありますか?

細かいところを丁寧にすることです。他の人が僕の作品を見た時にスカッとするような作品を作っています。全部が全部100%でやると人間ってしんどいと思うんですけど、僕の作品を見た方が、細部まで手が込んでいると思っていただけるように、ものづくりの中に緩急をつけて技術を入れ込んでるというイメージで仕事をしています。

—京表具の職人になったきっかけを教えてください。

もともと、表具屋さんの息子でもなんでもないんですよね。バンドをやっていて、音楽関係の専門学校に行っていました。東京の音楽関係の会社に就職する予定だったんですけど、私たちの時代はバブルがはじけ、就職氷河期だったのでそう簡単に就職とはいかず、そこで自分が何をしたいのかと考えていました。 親戚に表具屋さんをやっているおじさんがいて、小さいころから工作をしたり、何かを作ったりするのが好きだったので、見学に行かせてもらいました。そこで面白そうだなと思って、やりだしたら奥の深い世界でそこから結局29年近くこの仕事をしていますね。

—尊敬する方はおられますか?

修行先の親方ですね。その方はずっとクリエイターで、僕よりも20歳上の大先輩なんですけど、技術にとらわれていないというか、周りの良い意見を受け入れる方でした。昔の職人さんなんですけど、柔軟性が高くどんどん成長している方で、そういう風な人になりたいと思っています。

—趣味はありますか?

バンドをやっていたので、音楽関係のこと、ギターを弾いたりしますね。あと、映画を見るのも好きで「ブルースブラザーズ」という映画が一番好きです。 仕事中は一人なので音楽を聴いてリラックスしながら仕事をしています(笑)

——ずっとお一人で仕事されていると思うんですけど、ストレスはございますか?

-ストレスはあるときとない時がありますね。一人で仕事をしているので楽をしようと思えば出来るんですけど、楽をしすぎると後でしっぺ返しが来て、全部僕の責任になるので、一人で仕事をしていると良い面と悪い面がありますね。 ストレスが溜まったときは映画を見たりしてストレス解消をしています。

—これからの展望は?

表具屋さんの技術は元々中国から入ってきて、日本で発展した技術なので世界にあまりない技術なんですよ。日本で発展したので、中国よりも技術力が高く、日本でトップレベルの技術イコール世界トップレベルの技術ということになるので、世界に打って出ることのできる技術だと思っていています。 なのでこれからは世界に進出して、掛け軸や屏風だけでなく、アートパネルも含め、表具の技術を世界に広めることが出来たらなと思っています。

—職人を志す若者へのメッセージはありますか?

-職人さんは厳しい世界だと思われがちなんですけど、別にそんなことはないんですね。昔は休みが無かったり厳しいところもあったんですけど、今の時代はそんなこともないので、これから職人を目指す若者たちには気楽に仕事をしてほしいと思っています。今はどこでも誰でも職人を目指す人に対してウェルカムな環境になっていると思っています。ただ、甘い世界ではないんですけど、手先が器用、不器用などそんなことは関係なく、やりたい気持ちがあれば誰でもできる事なのでチャレンジしてほしいです。

YouTubeで京表具アートパネルの製作工程をご覧いただけます!

https://www.youtube.com/watch?v=u_waFJjogRQ
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