【清水焼職人】森俊次さんにインタビュー

江戸時代に活躍した陶芸家・尾形乾山。彼に影響を受け、今もなお第一線で活躍している職人・株式会社森俊山の代表、森俊次さん。見るからに職人の雰囲気を纏う森さんだが、職場の皆さんからは「俊次さん!」と下の名で呼ばれる程、フランクな関係を作られている。今回のインタビューでは森さんのこれまでのことや、陶芸家としての信条を伺った。

—なぜ森さんは陶芸家の道を志されたのですか?

正直に言うと成り行きですね。僕が高校生の頃に、兄が東京の大学に行ってそのまま就職をしたんですよね。そうなると親父は僕に、「陶芸家は自由やし、勉強せんでええし楽やぞ」と話を持ち掛けてきました。当時は、区役所や、市役所で働くものだと思っていましたが、陶磁器の専門学校に2年間通い、実際にやってみると面白くて、やりがいもある職業だなという風に思い陶芸家になろうと決めました。

—そしてそこから家業に入られて今の仕事をスタートされたのですね。

いえ、一度は家業に入ったのですが、当時の僕は、家業の仕事は似たような商品ばかり作っていてつまらないと思っていました。どうせなら大きい一品物を作ってみたい!と漠然と思っていて、父親ではない違う師匠に弟子入りをしました。そこで8年間程修行をし、自分の未熟さも含め改めて陶芸を1から学び直すことができました。その後、28歳で結婚を決意し、家業に戻り手伝いを始めました。それでも、作家思考がなくなることはなく、大きい一品物を気の向くままに作りたいという気持ちが強くありました。しかし、実際にそれだけで飯が食えるはずもないということに家業に入りようやく気が付きました。40歳になった時に父が病気になり、家業の仕事をメインでしてくれというお願いを父にされ渋々承諾して製作に取り掛かると、意外にも奥が深くて、面白いという感情を抱きました。20代から陶芸にのめり込んで、作業を積み重ねる度に気づかされる陶芸の奥深さから、陶磁器の面白さを知り、今も尚もっといいものが作れないかと追及をし続けています。

——紆余曲折がありながら今のスタイルが出来上がったんですね。そんな森さんの作品の特徴はどのようなところですか?

-江戸時代に活躍した尾形乾山に影響された作品を作っています。透かし彫りや、紅葉、桜などの絵付けを得意としていて、季節が感じられる作品を多く制作しています。また、特徴とは少し異なるかもしれませんが、質が良いものを多く作り続けることを常に意識しています。完成したと思ってから、見直して修正する点を見つければ+1点という形でより良いモノを作ろうと努めています。

—そんな森さんは、影響を受けた人物はいますか?

影響を受けた人物は師匠でもある宮下善寿先生ですね。若造の自分にみっちりと精神面、技術面共に指導をしてもらいました(笑)

—師匠からの指導で印象に残っていらっしゃる言葉などはございますか?

「陶芸は死ぬまで勉強だぞ」とは常日頃言われていました。当時75歳だった師匠ですが、絶対にミスをしないということはなく、多くの失敗をして改善をするということを繰り返していました。「75歳なっても全部わかっているわけちゃうからな!」と言っていたそうです。やっても、やっても終わりがないというのは時に苦しいですが、一つのことを追求していくことは非常に面白いですね!

—森さんにとって大事にされている言葉はありますか?

大事にしている言葉は出すのが難しいのですが、大事にしている考えはあります。それは、自分に報いがなくても、次世代の人達に報いがあればいいと思っています。実際に、親父が多くの人を世話していて、その行動が報いとなって自分に返ってきていて恵まれているなと思うことがあります。そのためにも徳を積み、自分への報いを求めず、下の代への報いに繋がってくれればいいなと思っています。

—素敵な考えですね。では、陶芸をしている際に意識されていることはどのようなことになりますか?

とにかく「土を大事にすること」です。日本の土地柄的にも段々と土が取れにくくなってきているのが現状です。特に、京都は土が取れない産地です。素材を大切にすることで商品にも気持ちが表れると思っています。業務的なところで言うと、「嫌な仕事はすぐに引き受けろ」ということを意識していますし、社員にも意識してほしいですね。嫌と思っている仕事は、おそらく皆が嫌だと思っていると思います。そんなときに率先して行うことで、周りの負担を軽減ができると思います。嫌なことから目を背けず、そこに突き進むということは自分自身も強く意識をしています。

—陶磁器に限らず、現在の若者の職人さんが特筆して意識すべきことは何かございますか?

昔のいいものを真似る、写すということですかね。模写することは必ず技術的にプラスになると思います。陶磁器に関して言うと、焼き物において、全く一緒の作品が生まれることはないので、自分の好きな陶芸家さんがいたら真似てみるのが良いと思います。その過程で、自分のスタイルが徐々に理解して確立することができると思います。

—職人の方々同士でコラボレーションをされることはありますか?

伝統工芸士の方とコラボをしたことはあります。漆や竹を使ってみたり、試行錯誤しましたね。ただ、お互いが意見を合わせて、妥協点を見つけなければいけないので難しいですよね。また、コラボではないのですが、陶磁器会では、毎年職人間で共通の品目を決めて制作するということをしています。ちなみに2022年は風鈴です。また見に来てください!とどのつまり、好きなものを作って需要と重なることがベストだなと思います。

—最後に今後の展望をお聞かせください。

海外にも商品を展開していきたいと思っています。最近は植木鉢制作の依頼が何件かきていて、それを機に自分も盆栽を始めたんです!実際に自分で種を買って育ててみると、「どうやったら盆栽がかっこよく見えるか」など消費者目線で考えるようにもなりました。それがすごく面白くて、様々な植木を育てながら鉢を作っています。最近だと、アフリカの植物パキポディウムと呼ばれる塊根植物に興味があって色々と勉強をしています。植木鉢は海外にも売れるので今後は今よりももっと力を入れていきたいと思っています。

YouTubeで清水焼の製作工程をご覧いただけます!

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!